ーーおや、誰だろう?




振り返ってみると、一人の女子生徒が仁王立ちで立っていた。





身長はふつうくらいだが、童顔である。髪はポニーテールにしていた。くりくりした真っ黒な瞳で、綾瀬くんを見つめ……いや、睨んでいた。





女子生徒の大きな瞳は、綾瀬くんの愛犬、チビのそれを思わせた。





「どうか、しましたか」





「……綾瀬悠一郎くんだよね? 生徒会長の」





もう名前を覚えてくれた生徒がいたのか。綾瀬くんは感心した。





「そうですよ」





綾瀬くんがそう答えると、女子生徒は急に、にっと笑った。笑った口から八重歯がのぞいて、それも愛犬チビのようだった。





「あたし、三年二組で新聞部の部長の須藤っていうの。よろしく」





犬のような女子生徒ーー須藤さんはそう言って、綾瀬くんに手を差し伸べる。綾瀬くんは、須藤さんが上級生であったことと、握手を求められたことに少し驚いた。





おずおずと、手を差し伸べる。





「……えっと、よろしく、お願いします」