どきどきと、心臓が高鳴る。
どうしてか、不安が過った。
「ほらー、遠桜ってー、地味な癖に小学校の頃、かなり男癖あったみたいなんだよねぇ」
と、右側の話を持ち込んできた同じクラスの、鮎川さん。
「え、小学校?」
隣は鮎川さんと仲が良い、神田さんだろう。
「うん、聞いた話だとぉ、なんかぁ。いっつも男子といて、イチャイチャしてたとか」
また意味の分からないことを。
どっから聞いて、誰が歪曲したかはわからないが、私は苛められていただけだ。
イチャイチャじゃなくて、嫌われてちょっかいを出されていただけなんだ。
「まじで?きもっ!男たらしかよ!!」
ぎゃはは、と彼女たちは本人が聞いてるのも知らず笑う。
「ね!ほんっと、最悪だよね。まじ、あり得ないっていうかさあ。あんま可愛くないくせに」
「地味子だしね!」
どうしよう。
『地味なんだよ!きっもちわりぃ』
『うっわぁ!遠桜の霊だぁぁ!えんがちょっ!』
小さい頃の光景が甦る。
心に鉛が落ちてくる。
心臓が張り裂けそう。
痛い。痛い、痛い。
「次は転入生狙ってんじゃね?たらしなだけにさっ!」
「あはははは!!きっもぉぉ!」
見ず知らずの人さえ私を悪く言う。
『馬鹿じゃね?』
トラウマが消えない。
『死ね』
些細なことが引っ掛かる。
「っぁ……はっ……」
耐えきれなくて走り出した。
彼女たちとは逆の中央階段を使い外に出る。
笑い声が耳にこびりつく。
あ、呼吸ができない。