「噂をすればなんとやら!ナイスチャイム!!」
「ほら、ちー。さっさと席着きなよ」
わー、と両手を上げて喜びの声を上げた千緒に、冷ややかに声をかけた。今の気持ちを察せられたくない。
「何よーっ。さっき『本当!?』って喜んだくせに」
口をとがらせ千緒が私を睨み付けるが、童顔の彼女に睨み付けられても、ちっとも怖くなかった。
「べ、別に喜んでない。ただ……、勘が当たって驚いたの」
「そんな嬉しくない「こらー、大西ぃ、いつまで遠桜と喋っているんだ。本鈴は鳴ってるぞーっっ!」
そんな嬉しくないの!?ーー千緒が言いかけた言葉は、いつのまにか教室に入ってきた、1-3の担当教師、吉田 雄[ヨシダ ユウ]によって遮られた。
「ほら、ちー?」
「むむ……、わかりましたよーっ。席につけば良いんですよねーっっ!」
やけくそのような声で千緒は席についた。
私の席は廊下側から2列目の3番目で、千緒は私から左窓側へ2個行ったところにある。
「あー、では、新しく席が出来ているから分かっていると思うが、我がクラスに転入生が来ます」
待ってました!と言わんばかりに、声が上がった。
千緒が歓喜の声をあげながら、私をチラチラ見て喜んでいる姿を見ようとしていたが、私は無表情に努める。
絶対にやけてたまるものか。
にやけてたら後で 嬉しいんじゃん とからかわれること必至だ。