遠桜が起きて危うく警察沙汰になりかけた。
まあ、俺の身なりから危ういことを連想したのだろう。仕方ないし、とりあえずはビーフシチューを振る舞った。
意外に喋るんだな。こいつ。
辛口コメントも、まあ……、素直じゃないな!
「ごちそうさま、帰ります。ありがとうございました!」
水を一気に飲み干せば、立ち上がるが、光る携帯を見つけ不審そうに耳にかざした。
「……?」
時が止まったように、遠桜は固まる。
「どうした?」
苦しそうに胸を手で握りしめた彼女を仰ぐ、と。
ぎょっ、とした。
彼女は静かに目から涙を溢していたのだから。