「ーー…ったく、腹、減ってんだろ? 喰えよ」
「へっ?」
顔を上げると、月宮と目があった。
ガラスの机には、ビーフシチューの入った白磁の皿と、銀のスプーン。
怒ってた訳じゃ、ないのね……。
なんだ、と苦笑混じりに息をつく。
私が悪いことをしたのはかわりないけど。
「ありがと……」
ぼそりいってから、スプーンを手にとって、食べようとした。
ーーそのときの、彼の視線。
黙って、私を見ている。
「な、なによっ!食べにくいじゃない」
「……ぁ、お……、おぉっ、わりィなっっ!!」
慌てながら、月宮がキッチンの方へいく。
どれ、一口。
スプーンで一口、掬って食べる。
口に広がるビーフの味。とても……。
「おいしいじゃない。意外」
男子がつくる料理だからとんちんかんなイメージがあったが……、って!
「ごめんなさいっ、いや、悪気はなくて素直な感想を述べたのであってーー」
「だっっっろ!? すっげぇ、俺、天才だろっ」
調子にのる月宮。
謝った私が馬鹿みたいだ。
「ば、ばっっかじゃないの!? 凡人並みに美味しいってことよ!!」
ぐさり。
そんな音がしそうなことを言うと、月宮はうなだれたまま私の隣に座った。
座られても、スプーンを口に運ぶ、が。
知らなかった、……男子が隣に居るだけで、こんな食べにくいだなんてっ!!