「あれ?珍しく遅いね、ヘル。」


一番最初に目が合ったのは、リズ先輩。
リズ先輩の本名は「リズ・ロイル」。通称は「レッド・ブレード」。男なのに、一見、女の人にも見える綺麗な顔立ちで、中身もTHISTARの中で1番穏やかだ。……と、俺は思う。
そのリズ先輩は、食事の席を立ち、まっすぐ俺がいる出口の方に歩いてきた。

「いつもなら1番に夕飯食べにくるのに。」


「いや…ちょっと部屋で考えごとしてて。」

俺はリズ先輩の手の方に目を移した。
リズ先輩の手には、食べ終えたばかりの食器と、おそらくコーヒーを飲み終えたばかりのマグカップ。
ジーっと俺がそれらを見つめていると、リズ先輩は、ちょっと笑った。
そして、そのまま後ろを振り返り、奥で食事中のアイラ先輩に声をかけた。

「レイジー!ヘルの分、さっき確か冷蔵庫に移動してくれたんだっけー?」


奥に座っているアイラ先輩がコーヒーを飲みながら、リズ先輩の声に反応して、こっちを見て頷き、冷蔵庫の方を指差した。
 アイラ先輩の本名は「アイラ・ローダンセ」。通称「クレイジー・ローズ」。でも、だいたいの人は、アイラ先輩のこと、そのまま「アイラ」って読んでいる。リズ先輩は「レイジー」って読んでるけど。


「冷蔵庫っすね!あ。今日の食番、誰っすか?」


THISTARの集会所は、普通クラスは食事が栄養部の方から3食ちゃんと出るけど………トップクラスは1食も出ない。
 理由は、普通クラスの奴らは任務をまだ任されない立場なため、現場に立ち会うことはなく、ターゲット暗殺を一人前にできるようになるためのクラスであるから、個人が外出しない限り、皆だいたい集会所にいる。だから毎日、同じ時間に食事を出せるけど…………トップクラスは、実際に現場でターゲットの暗殺任務を行うため、時間が各自それぞれバラバラ。皆揃って食事するってゆーことが、なかなかできない。………だから、トップクラスだけ、食事は自分達で作って食べなければならない。(差別だ!!涙)

ってことで、毎朝くじ引きで俺達は、その日の食番を誰にするか決めてる。ちなみに今日は、俺はハズレだった。


「ああ、今日はハーデッドが食番さ。」