「帝様にも未だ心をお許しになられていないのに、私ごときが御簾越しでも御目にかかれるとは…
何か、かぐや姫殿にはお気持ちを献上させて頂きたいものです…
…あぁ、そういえば!
ジュリエット、あれを」

「あれを…ですか?」

「そうだ、グズグズするでない」

「はい、かしこまりました」


「ほぅ、綺麗な宝石で飾ってある箱じゃな…
一体何が入っておるのだ?」

「今回の和平成立の証にと、我が区よりたくさんの宝物をお持ちしました…
いずれも帝様に明日正式にお渡しさせて頂きます
しかし、これは女性用の物…
この区の女性のお召し物では使いづらいと思いますが、鑑賞用にでもと、かぐや姫殿に献上させて頂きたく思います」


「かぐや姫や、ありがたく頂戴しなさい…
何が入っているのか余にも見せておくれ」

「では、お言葉に甘えてありがたく頂きます」



「おぉ、何と!
この靴はガラスで出来ておるのか?」

「左様でございます…
これは我が区にて代々伝わる技師のみが作れる物でございます
…姫、お気に召して頂けたでしょうか?」

「えぇ、大変素敵で言葉も出ないくらいですわ…
本当にこのような高価な物を頂いても宜しいのでしょうか?」

「貴女の輝きの前では、そのガラスの靴も嫉妬して、より輝きを増そうとする事でしょう…
美しい物は美しい方の傍にあってこそ、真の価値が発揮されるのです」


「かぐや姫よ、皇子からの贈り物、大切に扱うのじゃ」


「承知しております
皇子殿、その御心、ありがたく頂戴致します…
それではワタクシは部屋に戻って、大切に箱の中にしまっておきます…
そうでもしないと、この輝きが外に漏れてしまっては、多くの者に狙われるとも知れません…
帝様、宜しいでしょうか?」


「うむ、疲れてもおるだろう…
部屋に帰ってゆっくり休むが良い
…皇子へのお礼の文も忘れぬよう」

「畏まりました…
では今日はこれにて失礼致します…
どうぞ、ごゆっくりと楽しまれて下さいませ」


「お言葉に甘えて…
姫、明日も御簾越し扇子越しにでも、貴女の御声を聞けるのを楽しみにしておりますよ」