「さぁ、ロミオ殿、和平成立の祝杯をあげようぞ」

「両区の更なる発展を祝いましょう」

「乾杯!」


「さぁ、出来る限りの馳走を用意させた!
イングランド区とは嗜好が違うので口に合えば良いのだが」

「至れり尽くせり感謝致します…
次は是非、我が区の食文化をご覧頂きたく存じます」

「うむ、それは楽しみじゃ」


「時に帝様、この区ではあの方々のように女性は御簾に入り、扇子で顔を隠すのが風習なのですか?」

「まぁ、古くから伝わる様式を真似ておるだけじゃ
このような公式の場以外では、よほど気位の高い女性しかそのような真似事はせぬよ…
あぁ、そういえば、まだ紹介していなかったな!
先日、入ったばかりの、それはもう美しい姫がおるのじゃ!
これがまた気が強くて、余にすら顔を見せぬのじゃ」

「あぁ、お噂はかねがね…
何でも日本国一の美女だとか」

「うむ、顔を見なくとも、目が眩むばかりの美しさじゃ!
どれ、せっかくだから挨拶くらいはさせようぞ…
かぐや姫や、イングランド区の皇子殿に今回の労をねぎらう言葉を」


「…次期王位継承者様におかれましては、ご機嫌麗しゅう…
ワタクシごときが御声をかけるなど、大変もったいなく存じます」



「…これはこれは…
このように透き通った声は初めて耳にします…
それこそ私にはもったいない御言葉…
帝様が出し惜しみするのも同じ男性として良く分かります」

「ははは、出し惜しみしていると声を大にして言いたいところだが、姫の方が振り向いてくれぬのじゃよ…
まぁ、そのような気の強いところも気に入っているのじゃがね」