「さっきの…
”朋香達”の最期の言葉…分かった…?」


ぜぇぜぇしながら瑠璃子が尋ねた。


「分かったよ、分かってるよ、当たり前じゃんか…!
ほら、もうすぐ病棟だから…
先生んとこ、連れてくから…」


「もぅ…間に合わないよ…
『朋香』と『雫』が待ってる月に…逝かなくちゃ…」



「バカ…瑠璃子が逝くなら俺も逝く…
ほら、あの時の学園祭…
瑠璃子、かぐや姫だっただろ…?
月に帰る前に、最期にロミオにあげた毒リンゴ…
俺にもくれよ…な…?」


溢れ出る涙が止まらない。

瑠璃子は、ふっと笑って、血で染まって紅くなった手を差し出した。


「この紅で…我慢してね…
光弘は…皆の分も生きなきゃ駄目だよ…
自分勝手なのを押し付けて…ごめん…ね…
”私”も…愛して…る…よ…
『朋香』も…『雫』も…
…皆が皆を愛し…」




差し出した手が、パタッと下に垂れ堕ちた。



それから巡回の看護師が気付くまで、光弘は血だらけで冷たくなっていく瑠璃子を抱きしめたまま、中庭にうずくまっていた。