光弘はそれに気付いて、瑠璃子を自分の方に向かせて両肩に手を置いた。


「瑠璃子、お互いの傷を舐め合うんじゃなくて、お互いの傷を共有して幸せを探しに行こう?
一緒に始めよう。
暗くて星の見えない闇は終わるから…
朝日を信じて元気を出して。
1歩ずつ毎日をクリアしていこう。
2人で一緒に…」


そう言うと、ポケットからあるモノを取り出して、瑠璃子の左手の薬指にはめた。

瑠璃子がよく見ると、オパールの指輪だった。


「瑠璃色の石を探したんだけど、見付からなくて…。
しかもまだ全然お金に余裕なんてなくて、そんな高いモノじゃないけど…。
でも、瑠璃子と一緒に暮らしていける位の甲斐性はあるつもりだ。
”朋香達”の事を忘れたんじゃない。
ただ、立ち止まっている事を、あの2人は望まないと想うんだ。
だから…俺と結婚してください…」


光弘は瑠璃子を真正面からきつく抱きしめた。

光弘の肩越しに見える月。


瑠璃子の目から、綺麗な涙が雫となって零れ落ちた。

ぎゅっと抱きしめ返す瑠璃子。



「離さないから…安心して…
今まで独りで不安にさせてて…ごめん…」

光弘は耳元で囁いた。


すると瑠璃子は、


「『ごめんね』と貴方が私を抱き寄せる度、
傷が1つ消えて、別の傷が1つ増えるの…」

そう呟いた。


「え?」


と思い、瑠璃子を腕から解放して、その顔を見てみると。


瑠璃子が”朋香達”の時にそうであったように、月の光の逆光で、涙が頬を伝っている事は分かったが、悲しんでいるのか笑っているのか分からなかった。