私はさゆの手を、理事長室の前で離した。

ここからは、2人だけで向き合うべきで、私に入る事は出来ない。



「頑張ってね」



「うん…ありがとう、先生」



「いいえ。早く仲直りするんだよ?」



「…頑張る」



雄志とさゆなら、大丈夫だよ。

ピシャンと閉まる扉。

私は壁に凭れて、天井を見上げた。

…ごめん、さゆ…。

一つだけ、嘘をついてたよ。

私は向き合う勇気を持つのに、2人以上に時間を必要とした。

過去は引きずってないと言えど、ちょっとだけは引きずってて…離れるんじゃないかって、怖いんだ――…。