「………」



「だからね、豊が私の全てで、豊が死んでから、この世に残されたと思ってた。

それと同時に、豊に何もあげられなかった私に、豊の居ないこの世でどうすれば良いのか解らなかったの。



矢野さんの話聞いたらさ、私の見てなかった視点の豊の話が聞けて、過去の豊に会えて、

こんな私でも彼女として豊の力になれたんだなって知れて嬉しかった」




それは「豊を思い出して悲しい」って感情じゃなくて、「自分が豊と付き合ってた事に意味があって嬉しい」というものだった。


守られてるだけじゃ弱い。
守り守られてるから強くなれる。

そんな感覚かもしれない。




嬉しくて…こんな感情は久しぶりで……
私は優也に微笑む。


優也は小さな声で「天使の微笑み」と言ったが、問わないまま図書室に着いた。