「音和、こっち見て」
フェンスの前に立つ山岸君に促されて、私もフェンスまで行く。
「わあ!ピンク!」
フェンス越しに見た景色はピンク一色だった。
まるで淡いピンク色のじゅうたん。
「学校の裏に大きな公園があるんだよ。桜の木がいっぱいだから、この季節はピンク一色になるんだって」
山岸君は私の横で説明してくれた。
目の前の景色が綺麗で…私の好きな淡いピンク色がいっぱいで…
緩みそうだった涙腺は、緩む事も忘れた。
それよりも、目を大きく見開いて、この景色を目に焼き付けたかった。
でも………
「山岸君は、何で私にこの景色を教えてくれたの?」
そう……何で私に?
「優也……」
「えっ?」
「優也って呼んで」
山岸君は質問に答えず別の事を言った。