教室に入って、黒板に貼られた座席表を頼りに、自分の席に着く。
年度の初めは苦手。
名前を間違えられるから。
私の「音和」は「とわ」と呼ばれずらい。その度に名前を訂正するのは辛い。
「ねえねえ!」
席に座る私に声を掛けて来たのは、隣の席とその前の席の女子2人。
「えっ?」
話し掛けられた事に驚いたのと、緊張で間抜けな声が出た。
「えっと…武内……おと…わちゃん?」
クラス名簿の紙で名前を確認しながら、
自信なさそうに私を呼ぶ。
そうこうやって間違えられる。
「とわ…」
名前を言ったのは、私の斜め後ろに立つ男の子だった。
身長は豊より少し低め、暗い茶色でふわふわした柔らかそうな毛。少しパーマが掛かってるのか…くせっ毛なのか…
豊よりは血の気があるけど、白い肌に痩せた身体付き。
顔付きは鼻が高くて目が切れ長で…いわゆるイケメンの部類だろう。