「誰に口を聞いてるつもり?」



涙をパジャマの裾で拭き取って、クスリと微笑む零をキッと睨む。

そんな憎たらしいほど、綺麗な笑顔に時々ドキドキしてしまう自分にも腹が立つ。



「藍澤豊様のお嬢様、朱里様でございます」



零はキパッと答えた。

真っ直ぐ冷たい瞳で私を見つめながら。



「わ…分かってるならいいのよ」



そんな正論言われたら、何も言えないじゃない。


唇を尖らせてそっぽを向く。
可愛くない、私。


「朝食の前にお着替えをなさらなければなりませんね?」


にっこりとわざとらしく零は笑みを浮かべる。
それをムスっと頬を膨らませ、無視をする。
なんで怒ってるのかも分からなくなってきた。


もう変なプライドしかない。