弱みを突かれ言葉もでない。

泣いてしまうなんて、恥ずかしい。


零の前だけは絶対泣かないって決めていたのに。



「ひとつお言葉よろしいでしょうか?」



零は黒いハンカチを私の目尻に優しく当て、涙を拭き取りながら言った。

柔軟剤のいい香りがするハンカチ。
そのせいか自然と心も落ち着いてくる。


私は目を閉じてから答えた。



「何かしら?」


「私め…一応男なのですが……」

ゆっくり目を開けると、あからさまに困った顔の零。


「そんなに拒絶されてしまうと、男として結構傷つきますね…」


珍しい顔をする彼から目が離せない。




「………零は………」



零は、ずっと私の隣にいてくれた。

いつも一緒にいてくれる。


特別な存在。

恋愛感情というものなどは、別として…の、特別。