「……君、寝不足?」


「へっ?」



パチッと目が合った先輩に、あたしは素っ頓狂な声を上げた。



何で今、寝不足だなんて言葉使うんですか?


ていうかそんな話、してましまっけ?


そもそもあたしに話し掛けたの、初めてじゃないですか?


ていうか、やっぱりあたしの呼び方『君』なんですよね。



いろんな言葉が交錯したけど、口をパクパクしてしまうだけで、声にならない。



痺れをきかせた先輩が、絶対零度の瞳のまま頬杖をした。



「……聞いてる?」


「ききっ、聞いてますけど、寝不足じゃないですよ!」



どもった声を誤魔化して、あはっ、と笑う。


すると先輩は目を逸らして



「……そう」



と、だけ呟いた。