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パチン

悪魔はまた指を鳴らした。

目の前に光を放つ一枚の紙が現れる。

鈴子の前でゆらゆらと宙に浮いていた。


「悪魔の契約書です」


水野が呟いた。

そこにあるのは契約書。

サインをすれば全てが手に入る。


「サインをどうぞ」


皺一つない手袋が一本のペンを差し出す。


「つまらない人生のまま終わりたい人間などいません」

「つまらない人生…」

「貴方だけではない、誰もが望む事を叶えるチャンスが今訪れているんですよ」

「チャンス…」


暗示のように流れ込んでくる言葉の数々。

鈴子はゆっくりとペンを受け取った。

悪魔は姿勢よく立ち。

完璧な微笑みで見つめている。


「悪魔になれば…全てが叶う…」


うわ言のように小さな声。

鈴子は思わず息を飲んだ…。



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