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「では、ご理解頂けたようなので先に進みましょう」


ハッと我に返る。

親近感を持てたとて、

彼のノルマを達成させる訳にはいかない。

それは全く別問題だ。


「掘り下げれば貴方の欲も浮き彫りになるでしょう」


ファイルを片手に地面を追う。

するとジー…と鈴子を見た。

何が書いてあったのか気になってソワソワする。


「な、なんですか…」

「いえ。掘り下げるまでもいかなかったので…」


腑に落ちない。

どういう意味だソレ、と心の中でツッコんだ。


「学力、運動神経共に平均以下。特技も趣味もこれといって無し。恋愛経験0、大きな苦難に悩んだ事もない」

「くっ………」

「逆にすごいですね。これだけ何も無い生活は」

「ほ、ほっといて下さい!!」


ポンポンポン、と簡単に上げられた点はクリーンヒットだ。

胸がズキズキと痛む。


「才能、名声、金、何でも与えて差し上げますよ?悪魔にさえなれば」


うっすらとひややかに

そして妙に美しく微笑んだ。

心が引き寄せられるような声だった…。


「残りの人生は思うがまま、待っているのは幸せばかり」

「………」

「悩む必要は無いでしょう。輝かしい日々が貴方のモノになるんですよ」

「………」


悪魔との契約にパッピーエンドは想像出来ない。

わかっているのに考えてしまう。

思い通りの未来を

憧れるような生活を


「死神さえなれば、貴方はどんな夢も叶えられる」



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