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ここは日本。

ここは自分の部屋。

言い聞かせるように二つの言葉を繰り返していた。


「スーツより…派手ですね…」

「これが本来の格好ですが、日本からすれば派手でしょうね」


心ここに在らず。

そんな状態で会話してみる。

頭の中はいつも以上に進みが悪く、

自分はどうすべきなのかが全くはじき出されなかった。


「納得頂けましたか?」

「………」


はい、とは言えない。

出来れば帰って欲しいと思うばかりだ。

とても叶いそうでもないが…


「あの…何で私なんですか?」


一番の疑問

これといって野心も欲もない鈴子。

彼との契約を必要としてないのだ。


「担当なので」

「担当?」

「はい。誰でもいい訳ではありませんから、昔と違って選べないんです」


世知辛い社会の波を感じた。

まるで父さんと同じで企業の勧め人のような事を言う。

彼なりの冗談かと考えてしまった。


「効率よく回収するには仕方のない事なんですよ」


「へぇ…」

「と、いう訳で貴方の契約を取らねばなりません」

「無茶苦茶な話ですね…」


彼は、当初の予想通り営業マンという読みであってるかもしれない。

今は悪魔と言えど、まるで割りの言いシステムに合理化されていた。

異物でしかなかった彼にも今は妙な親近感が持てる。


「大変なんですね」

「まぁ慣れですよ」


慣れる事が大事。

どこも一緒なんだなと感既深くなる鈴子だった。



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