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鈴子の日常は不躾なサラリーマンに壊されたのではなく。

日本に馴染むスーツ姿で変装した悪魔に壊されたのだ。


「うそ…でしょ…」


深々と腰を折る紳士。

鈴子はただ目を丸くした。


「悪魔にも柔軟性が必要なんです。この格好では戸を開けてもらえそうにないですしね」


スーツ作戦は半分失敗、半分成功。

そんな口振りだ。


「まぁ戸は開かずとも侵入は容易いですけど、初対面はやはり印象良くいきたいですからね」


誰でも思いつきそうな事を述べる姿がもう異色だった。

普通すぎる。

悪魔だと名乗っておきながら当たり前な事を言う。


妥当すぎる事を…

本当にこの人は悪魔なのだろうか?

考え方すごく普通だし

いや…いいと思うよ?

いいと思うけど…

最終的に怪しい人には変わりありません。



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