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「申し遅れました。悪魔の水野利一です」

「……え?」

「担当の人間と契約を交わし、望みを叶えるかわりに魂を頂く仕事をしています」

「……はぁ」


突拍子がなさすぎる

これが宗教でも詐欺でもないのなら夢だろうか?

イタズラにからかわれているのだろうか…

胡散臭い紹介が頭の中でグルグルと回っていた。

自然と名刺を受けとる鈴子

そんな自分にも呆れてしまう。


素直に名刺貰ってどうすんの!!

ホント気が弱いんだから…

なんか情けないッ

というか…

死神って、名刺持ってるんだ

ていうか職業なの?

何コレ?ドッキリ?


引きつった顔で名刺を眺める

紙面には──。


"悪魔 水野利一"


と、先ほど男が言った通りの事だけ書いてあった。

他に何の情報も印されていない。


「和名…なんですね…」


地味なツッコミ

今の鈴子にはそれが精一杯だった。


「悪魔といえばエクソシストみたいに洋風なイメージですけど、日本人もいますよ」


真面目に返答される

ていうか、知ってるんだ。エクソシスト…

どうでもいい事柄に新しい情報が加わった。


それでもやはりどうでもいい事には変わりはない。



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