埒が明かないので、鈴子は上着を掴むと足早に家を出た。

何故か水野もついてくる。

鍵を掛ける鈴子に話しかけた。


「私を置いて行くのは、いささか無用心ではありませんか?」

「貴方相手に信用する方法があるなら教えて下さいッ」

「なるほど。それもそうだ」

「ていうか、何故についてくるんです!?」


早歩きの鈴子に悠々とついていく水野。

それが早歩きから駆け足にかわろうとも…


「警戒心は強いが順応生有り。…まんまですね」


またファイルを見ている。

ことあるこどに内容と見比べては納得していた。


「ちょっと!それ、ホントやめてもらえませんか?」

「大事な作業ですから」

「…何が書いてあるんです?」

「ダメですよ」


手を伸ばした鈴子からスイと避けた。

なんとなくムカッ…

負けじと押せば更にスイスイと避けた。


「プライバシーの侵害ですッ」

「悪魔に法律は関係ありませんから」

「都合いいな!!」

「はい。非常に助かります」


丁寧な口調が逆にピキッとくる。

初対面の時は良い印象だったはずが…

今は小馬鹿にされているような気がしてならない。

もしかしなくても…

アレは、口調や態度から物腰一つまで仕事用じゃないだろうか、

接客時のスイッチが入れば営業スマイルをするように…



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