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悪魔は崩れ落ちた…

床に手を付き膝を付く。

今一度、冷静さを取り戻そうと必死に頭を回転させた。



なんて厄介な人間が担当に回ってきたんだ…

契約を取らずして逃げ帰るなど…断じてあり得ない!!

私に取れない契約などあるはずがないッ

壁が高いからこそ挑みがいがあると言うものだ…

必ず伊藤鈴子から契約を取る。

それまでは絶対帰らない!!


「わかりました」


悪魔が立ち上がる。

契約書を煙りのように消すとペンを拾った。


「"今は"契約する気がないと受け取りましょう」

「えっ」

「ここは一つ時間をかけようじゃありませんか」

「いや、あの…」


そうきたか、と悪魔の切り返しに言葉を濁す鈴子。

諦める気がない事だけはひしひしと伝わってきた。


「契約が取れるまでいつまででも一緒にいますよ。決して引き下がりませんのでご了承下さい」

「困りま」

「しかしペンをへし折るとは中々の力をお持ちのようで」

「聞けよ!!」


嘘臭い笑いを立てる。


「いや、ぺンを折ったのは謝りますけど」

「気にする事ないですよ、100円ショップのですから」

「百均!?悪魔が百均とか使うの!?」

「使いますよ。実に便利です」


掲げたファイル。

これも百均ですと大真面目に言う。

悪魔の世界にも普及している事実に感心してしまった。



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