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ペンを握り締める。

そして…─。


バキッ


渾身の力を込めて真っ二つに叩き折った。


「え…」


今度は悪魔が目を丸くする。

予想外の出来事に完璧な表情が崩れた。


カラン…


無残な姿になったペンが転がる。


「契約はしません」


困った事になった…

契約寸前でまさかの拒否。

対処法に頭の回らない悪魔が初めて狼狽えた。


「…何故です?折角のチャンスを棒に振るつもりですか?」

「うーん。別にチャンスとも思わないかな」

「はっ!?」

「最初は雰囲気に飲まれちゃったけど。契約はしません」


こんなパターンあり得なかった。

そもそも契約を断られた事などないのだ。

水野は言わば優秀な悪魔。

ノルマが達成出来ないなんて事はあってはならない事態だ。



そんな…これだけ付け入る隙を持ちながら、契約しない…だと?

なんて事だ…

この人間はそんなにも馬鹿なのか?

望みだらけなはずだろう?

悪魔の誘いを断るとは…

余程の精神力の持ち主か超ド級のアホしかいない。


後半はもう鈴子に対する悪口である。



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