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えー…

皆さんにはあるでしょうか?

目の前に悪魔が表れた事は…

しかも悪魔界の社長

信じられるわけないですよね。




【突然の訪問者】




伊藤鈴子高校一年生

勉強、スポーツ共に平均以下。

才能も特技も夢も希望も、

これといって無し。

凡人よりも少し駄目な凡人。


そんな私にこんな不思議な出来事は起こるはずないと思ってた。


ピンポーン


家のチャイムが鳴ったのは休日の昼間。

親もいず訪問者の予定もなかったのでやや面倒そうな顔で玄関を開ける。

下を向いていた鈴子の目には黒いスーツの裾と革靴。

セールスマン?と思っていたところだった。


「こんにちは。少しよろしいですか?」


頭上から丁寧な口調で言われ顔を上げる。

清潔感のある短い黒髪に好感が持てる笑顔。

黒いスーツにピシッとネクタイを締めていた。


「はい?」

「魂の契約はいかがですか?」


シーン…


想定外の言葉

ただのセールスマンから怪しい人物に変わった。


…何言ってんの?この人

パッと見ても仕事の出来そうな好青年なのに…もしかして宗教の勧誘?


鈴子は彼の奇妙な第一声を高度な勧誘文句だと思った。

呆然とする鈴子に鋭い視線が注がれる

真面目そのものな態度に、勧誘も大変だなと一人感心した。


「あっ…いや、大丈夫です…」


気後れした鈴子は控え目に断る

男は苦笑した。


「言い方を間違えました。魂を私に下さい」

「…いえ、だからいいです…」

「おお!いいんですか!」

「いや…了解のいいじゃなくて…」

「魂の契約をする以外選択肢はないんですがねぇ」


もう…わけが判りません。



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