10歳のときの自分がなければ、いまの自分は絶対にいません。

父が会社を清算したことより、母と死別したことが絶対的にその後の私を変えたのです。

母は、私を産むことが、人生において最も大事なことだったのではないかと思います。

神様がそうしてくれているのかはわかりませんが、母の死後、私はいろんな書物を読んで、いろんなことを考えながら、心のなかに母の存在を確かめることとなりました。

そして、父の会社の破綻後は、一転貧乏生活が始まり、そのおかげで「いつか会社の社長になりたい」という夢を抱くことになります。

そうしたハングリー精神と母への愛。

人間はなんのために生きるのかという意識が折り重なったところに、私の人生があるように思えてなりません。

客観的に「渡邉美樹」という人生を見ようとすると、不思議なのです。

すべては見えない手の存在によって、仕組まれているようにも思えるから。

いま、毎朝、毎晩、仏間で私は母と向き合っています。

私にとっての大きな変化は、母が亡くなって初めて、母への感謝の気持ちが芽生えたということでした。

それまでは、ただただ「母が好き」という気持ちを抱いていた自分でしたが、目の前から母がいなくなって初めて、母の言動が自分に遺してくれたものがどれほど大きなものだったのかを、思い知ることとなったのです。