「おら、乗れ。久弥に会わせてやる」


蒼さんは車の後部座席の扉を開けた。


美奈さんは助手席に乗る。



「お前、久弥の女なんだろ?」



久弥の女、か……。


あたしの前から久弥はいなくなったのに……。



「お前、久弥のこと好きじゃないのか?」


蒼さんがあたしに訊ねる。


「久弥があたしのこともう好きじゃないとしても、それでもあたしは久弥が好き」


「フッ……久弥は良い女ん選んだな。まっ、俺のタイプじゃないが。ほら、行くぞ」



蒼さんに促されてあたしは車に乗った。


「自己紹介まだだったよね?私は城崎 美奈。専業主婦でぇす!!運転してるのは城崎 蒼。蒼ちゃん」


同じ名字……。



「ご兄妹ですか?」


「俺の嫁だ」



蒼さんは怒り口調で呟いた。



「す、すみません……」



「っち……本題に戻るぞ。今、向かってるのは久弥の実家だ」


久弥の実家。


「久弥、実家にいるんですか!?」


「……めんどくせえな。久弥は何もお前に言わなかったんだな」



何を?



あたしは久弥から何を聞いていないの?