「あんたに言ってるんだよ。音痴に歌っててもいいけどさ、泣きそうに歌うの辞めたら?」


泣きそうに歌う。


誰も気付かなかった俺の感情を目の前にいるこいつはすぐにわかった。



「そんな悲しそうに歌うと、歌が可哀想だよ」



なんで、



俺が欲しかった言葉をこいつはくれるんだ?



「もっと楽しく歌わなきゃ。音痴がちょっとはマシになるよ」



「バッカ、じゃねぇの?俺、音痴じゃねぇし……」



「嘘だぁ」と言って信じようとしない。


「本当だって。今から歌ってやるから」



なぜだろう?



そのとき、すごくすごく、



歌いたくなった。