蒼さんは久弥と初めてステージに立ったときの様子を教えてくれた。


ねぇ、久弥……。



一度で良いから久弥がステージで歌ってる姿を見てみたいよ。



あの綺麗な歌声を。



「さぁ、ここだ。着いたぞ」



蒼さんの車はお城のような大きな屋敷の駐車場に止まった。



「ここって……」


「久弥の実家」



やっぱり!!!


想像以上の規模の大きさに度肝を抜かれた。



「降りろ」


「あっ、はい」


「美奈はここにいてくれ。何かあったらすぐに連絡するんだぞ?」



蒼さんはあたしに「降りろ」と言った声とはまた違う声で美奈さんに言った。



蒼さんと二人で玄関までの石畳を歩く。


手入れの行き届いている綺麗な庭には大きな噴水がある。



ここ、本当に人の家!?



玄関の前にいくと黒スーツ姿のお兄さんが二人立っていた。



「城崎です。久弥、帰ってきてますよね?」


「えぇ、ただいま自室にいらっしゃいます。ご案内致します」



黒スーツのお兄さんがあたしたちを家に入れてくれた。