「――……せ、んせ……いや、あの……」
「はい?」
じれったい。
拳を握る。緩め、笑顔を保つが、ああ、もう。
「――……せ、んせ……いっし、ょ……に……側に……」
「今日は失礼しますかね」
「まっ」
背を向けた状態からまた戻る。
「待って……」
弱々しくとも確かに聞いた声。
待っての言葉。
それはつまり、彼女は俺を求め始めたこと。
歓喜に浸らなかったと言えば嘘になる。
だがあくまでも、表面上は平静に。いつもの俺を演じ続け。
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