葬儀場のなかを入っていくと奈那子さんの遺影があった。

 俺の好きな優しいけど少し儚げな奈那子さんの笑顔があった。

 やはりきれいだ、と思うのも惚れた弱みだ。


 「和、こっちに来なさい」


 そう言われ棺に恐る恐ると近づく。

 その中にはまるで眠っているように安らかな奈那子さんがいた。

 やっと奈那子さんの死を痛感したのかぽたりと涙が零れ落ちる。


 「な、なこ…さん…」


 止まらない、涙が、止まらない。


 「和…」


 親父は優しく俺の背中をたたいた。

 その横で母さんも声を殺して泣いていた。


 ぱたんと扉の閉まる音がして母さんがその方向に駆け寄っていくのが見えた。

 でも俺は奈那子さんを見ていたかった。


 いくらなんでも若すぎる。

 俺と10個違いだからまだ35歳だ。

 若すぎるよ、奈那子さん。


 「和くん」