ナナコガ、シンダ



 「え、」

 「今日の夕方、いきなり容体が急変してな、そのまま…」

 「う、嘘だろ…」

 「明日が通夜で、あさってが葬式なんだ」


 奈那子

 桐島奈那子

 俺のおばで、俺の初恋の人


 「お前、出れるか?」

 「あ、うん。部長に頼んでみるわ。」


 遠くで親父の頼むな、という声が聞こえた。

 とりあえず明日部長に電話してみよう。


 目を閉じてみると奈那子さんの笑顔が浮かんだ。

 奈那子さんは昔から体が少し弱かった。

 そんな優しくてはかなげな奈那子さんが俺は好きだった。


 奈那子さんは俺の10個上だった。

 小さいころはよく俺の世話をしてくれていた。

 小学生になるかならないかぐらいのときに俺は理解した。

 奈那子さんに恋していることを。