桐島和臣、25歳。
大手の商社に勤め初めて3年が過ぎた。
上司も後輩もいい人ばかりでとくに不満もなく生活している。
大手だけあって仕事も大変で忙しい毎日だ。
家に帰ってきてお気に入りのソファーでゆっくりする。
それが俺の毎日の楽しみだったりもする。
ピリリリリ!
静かな室内にけたたましい携帯の着信音が鳴り響く
「もしもし」
『もしもし、和臣か?』
自分によく似た、でもやっぱり少し自分より落ち着いた声。
「父さん?どうしたんだよ、こんな時間に」
桐島宗臣、県庁に勤めるエリート公務員。
よく友達にお前の父ちゃん怖い、と言われたほど厳しい親父だ。
そんな親父の声がいつもより悲しそうだ。
「いいか、よく聞け
――――――――奈那子が死んだ」