「浩太君、ありがとう!」


「いえいえ。さ、お座りください。お嬢様。」


浩太君が言うと、私は笑う。



…あ…


陸斗君の隣は天宮さん…なんだ。



――ズキン。


だ、だめ。


婚約者…なんだもんね。

仕方ないよ。


仕方ない…。


「陸斗と何かあった?」


…あ…


浩太君が心配した表情で私に聞く。



「な、何でもないよ!」


浩太君には言えない。

あの事は…。


「ま、俺は別に良いけどね。美鈴ちゃんと近付くチャンスだし。」


「え?」


「けど、美鈴ちゃんの悲しい顔を見たくないのも事実。」


「浩太君…」


「辛い時は我慢しないで良いんだよ。」


「私…分からないの。」


「美鈴ちゃん…?」


「本当はこのままじゃ…嫌だ。けど、陸斗君との関係が壊れちゃうのも怖い…」


怖くて仕方がない。



だから、離れるのも嫌なの。