それでも、キミが好きなんだ




『美鈴の誕生日も近いし、ケーキも持って行くから。』


ケーキ…


「あ、ありがとう!お母さんの手作り、楽しみ!」


『それは良かった。じゃあ、また近くなったら電話するね?』


「う、うん!」


『またね。』


お母さんはそう言うと、電話を切った。



お母さん来るのかぁ。


楽しみだぁ。



来るのはお母さんだけで良かった。


もちろん、お父さんにも会いたいけど…



陸斗君と浩太君の事、
すっごく気にするかも。





…にしても


やっぱり、一ヶ月って
長く感じるなぁ。



陸斗君がいない。


それだけで毎日が大きく変わってる。



陸斗君は本当に特別な存在なんだ。


だけど


「やっぱり、連絡なんて出来ないや…」


私はただの友達。



それに、気持ちを気付かれちゃうのが怖い。


最近、気持ちが溢れ出しちゃうんじゃないかって思うと怖いの。













だって


気持ちを気付かれたら、
陸斗君とはもう…



前みたいに普通に接してくれなくなるかもしれない。


それが怖いの。



だから、


この気持ちに気付かれないように友達らしくしてなきゃだめなんだよ。



寂しいとか言えない。


ただ、見守るしかない。







――翌日。


「美鈴ちゃん、高田ちゃん、カラオケ行かない!?」


うっ…だめだめ!

いつもの私らしくしてなきゃ。


寂しいのは仕方ないけど…



あっという間だもん。


あっという間…



「美鈴ちゃん!」


…はっ…


「へ?何?」


私は浩太君を見る。


「カラオケ、一緒に行かない?」


「え?」


「美鈴ちゃん、ぼーっとしすぎ。そんなに陸斗に会いたいの?」


「…え…」


「そんな顔しないでくれよ、辛くなるじゃん。」


「こ、浩太君…」


浩太君は切ない表情。









「ご、ごめ…」


「高田ちゃん、ごめん!やっぱ、みんなでカラオケはなし!」


浩太君が理世ちゃんに言う。


「え?」


「美鈴ちゃんとデートする!」


「へ?」


浩太君は笑ってそう言うと、私の手を引く。



「あ、あの…浩太君…」


「たまには強引に行かないとね。」


「…え…」


「美鈴ちゃんがどんなにあいつを好きでも良い!俺だって美鈴ちゃんと同じように美鈴ちゃんを想ってるんだ。本気で行くから。」


「浩太君…」


「行こうぜ!楽しいとこ。」



そっか。


浩太君も私と同じなんだよね。



私は

どうして、こんなに想ってくれる彼の事を好きになれなかったんだろう。


好きな人には好きな人がいる。



浩太君も私も同じ。


どうして、こんなに切ない恋を選んだんだろう。



どうして、上手く行かないんだろ。


私も浩太君も絡む事のない平行線をたどってるんだ。















「浩太君、すごい!」


浩太君と私はバッティングセンターへ。


「俺、小学生の時…野球やってたからさ!」


「さすが!」


ちゃんと球がバットに当たってるし。



「美鈴ちゃんもやるかい?」


「う、うん!」


私もバットを持つ。



だけど


すごい勢いで球が飛んでくる。



「え、えいっ!」


私は頑張ってバットを振るう。



だけど


「か、空振り…」


「大丈夫だよ!ちゃんとボールを見て!」


「う、うん!」



だけど


見事にずっと空振り。



「や、やっぱり苦手みたい…」


「大丈夫だよ。段々、慣れてくるから!ちゃんと球を見れば大丈夫。」


「う、うん!」


私は集中してもう一度。



すると


…あ…


私が再び、バットを振るうと綺麗な金属音が鳴る。



ようやく、ちゃんと当たった。
















「浩太君、やっと当たったよ!」


私ははしゃぐ。


「良かったね、美鈴ちゃん!」


「うん!よし、次も頑張るよ!」


「じゃあ、俺も。」


浩太君も再開する。





だけど


「結局、まぐれだったなぁ。」


それ以降は私は打てなかった。


「仕方ないよ!慣れてないんだし。また来ようか?」


「う、うん!今度はみんなで行こう!」


「みんなで…か。」


「浩太君?」


「さて、次はどこに行きましょうか。」


「また楽しいところ?」


「もちろん!」


「浩太君は楽しいところ、たくさん知ってるんだね。」


「まあね!遊ぶの大好きだから、俺。」


「あはは。浩太君らしいや。」





やっぱり、浩太君といると楽しいなぁ。


友達って良いなぁ。



「これ、可愛い!」


「美鈴ちゃん、可愛い物好きだよね。」


「うん!」


私と浩太君は買い物に行く。









「このうさぎのマスコット可愛いなぁ。癒される!」


「何だか、美鈴ちゃんみたいだな。」


「へ?」


「可愛くて癒される。」


浩太君は笑って言う。


…え…


「そ、そんな事ないよ!」


何だか調子くるっちゃうな。



やっぱりデート…なのかな。


うっ…何か、緊張してきた。



浩太君もやっぱり男の子…なんだなぁって実感。


そう思うと意識しちゃうなぁ。



前に告白されたわけだし。


友達でいたい。



けど


浩太君は私の事…



陸斗君は私に告白された時、こんな気持ちだったのかな。


だから

翌日からは普通に接して…


「みーすずちゃん!」


「な、何?」


「ぼーっとしすぎ。俺とのデート、楽しくない?」


で、デート…。


「た、楽しいよ!」


「また、陸斗?」


「え?」


「ね、どうしたら美鈴ちゃんは俺の事、見てくれる?」








…っ…


「あ、あの…浩太君…」


「ごめん。こんな事言っても困らせるだけだよね。」


「浩太君…」


「けど、俺だって本気だからね。」


浩太君、真剣な表情…。



けど、私は気持ちには答えてあげられてない。





だって、私は…


「美味しい…」


「だね!俺もここのクレープ好き!」


私は浩太君とクレープを食べに行く。



「甘くて美味い!」


「あはは、浩太君!口元、クリームまみれ!」


私は笑って言う。


「え?どこ、どこ?」


「待っててね。」


私はハンカチを取り出し、浩太君の口元についたクリームを拭き取る。



すると


「…っ…」


浩太君の顔は真っ赤。


「浩太君?」


「うっ…美鈴ちゃん、こういうのずるい。」


「へ?」


「あー…やべぇ!」


「浩太君…?」















「そんな事されたら俺、やばいよ?」


「へ?」


「さて、次は…」


浩太君…



その後も、私は浩太君と色々な場所へ買い物に行った。


「楽しかったなぁ。」


「う、うん!」


久々にたくさん遊んだなぁ。


気付いたら空は真っ暗。



バッティングセンターとか初めて行ったなぁ。


「良かった。」


「へ?」


私は浩太君を見る。


「美鈴ちゃん、今日ぼーっとしてたからさ。」


「え?」


「陸斗の事ばっかじゃなくて、俺の事も考えてよ?美鈴ちゃん。」


「浩太君…」


「美鈴ちゃんに少しでも男として意識して貰いたかったから。」


「…っ…」


「俺にも本気出させてよ?」


「浩太君、私…」


「俺、今まで…恋愛とか適当だったんだ。」


「…え…」


「美鈴ちゃんが俺を変えたんだよ。」









「浩太君…」


「美鈴ちゃんの笑顔をもっと近くで見たいって。陸斗に向ける真っ直ぐな瞳を俺に向けて欲しいって。だから…」


「浩太君…」


「俺だって諦めたくない。」


「わ、私…」


「そろそろ帰ろっか。今日はありがとう。また、遊ぼうね。」


「あ、あの…」


すると


浩太君はいきなり私の頬にキスをする。



「え?浩太く…」


「ま、またね!美鈴ちゃん!」


浩太君はそう言うと、私から離れた。



浩太君…。


頬にキス…されちゃった。



ごめんね、浩太君。


それでも、私…





――ガチャ。



私は部屋に帰る。


今日は色々あったなぁ。



浩太君の事、男の子として意識しまくりだよー。


浩太君の気持ちに私は答えられない。



切ないなぁ。


私も浩太君も一方通行の恋をしてるんだ。