勝手に噴出しそうな口を一生懸命両手で押さえていると、さっきまで後ろを向いていた黒髪で長身の人と目が合ってしまった。

少々驚いたためにがっつりと見つめ合ってしまい、遅れて反応した脳が体中を熱くして、私はあわてて目線をそらす。


うわーうわー…どうしよう。
かっこいい。

すごい単純だけど、カッコイイ。

そして明らかに他の人とは違う雰囲気。


「………」

再びその顔が見たくて、顔をのっそりと上げる。

だけどすでに目線はそらされていて、また元のように後ろを向いてしまっていた。



名前…なんていうんだろうなぁ。

後ろ姿を見つめて、ただぼんやりとそんなことを思った。


「あーもううっさいわね!! こっちは妹と来てるんだから! ゆっくりさせなさいわよ! あんたみたいなのが結婚できない男って言うの!」


それからお姉ちゃんはいつの間にかキレて居て、店内にも関わらず大声を上げる。


「はいはい悪かったって。ごめんね陽ちゃん。うん、可愛い」


最初から変わらずの赤い髪をしたイケメンさんはそっと私に手をのばす。

だけど後から出てきたおねえちゃんの手でそれは見事阻止されて、「いてっ」とかわいらしく声を上げた。


「アタシの妹に気安くさわんじゃないわよ」

「ぶっ」

お姉ちゃんのその真剣な声に、さっきの長身さんは噴出す。


「何笑ってんのよ茜!」