「…ゴホッ、よ、陽ちゃん、そういうわけじゃないんだけどね…」

どうやら静かにむせていたらしい。

不透明なガラスのコップをテーブルの上にコトン、と置くと少し減ったコーヒーに連続して輪が出来た。

それから焦ったようにお姉ちゃんは手をぶんぶんと振る。


「…じゃあどうして?」

そんなお姉ちゃんを問い詰めるように言葉が進んで。目を少し泳がすお姉ちゃんをじっと見つめた。

しばらくそれを続けると、観念したらしいお姉ちゃんは微妙に眉を下げる。

それからキラキラとした唇を開いて、


「アタシの友達、結構、危ない奴も居るからさ…」

弱った声を出すお姉ちゃん。


「危ない奴?」

思わず聞き返す私に、お姉ちゃんは言葉を紡いだ。


「合コンで会わせた奴らと、家に連れてくる奴らは大丈夫なんだけどさ。昔アタシが付き合ってた奴らとか、軽く近づいてくる奴ら危ないのよ。…そんな奴らと陽を会わせるわけには行かないじゃない?」

「………」

「陽に何かあったら私もう生きていけないし、陽にはちゃんと高校を卒業してもらいたいと思ってる」


初めて聞くその真剣な声に、思わずまた私は固まる。

…そんな風に思ってくれてたんだ。



「ありがと。嬉しい。……でもさ、その合コンで会った男の人達にもう一回、会ってみたいな」

「えっ」


私がにっこりと笑うと、さっきの真剣な雰囲気はどこへやら。お姉ちゃんが変な声とともに顔を引きつらせた。