「中学の時さ、アタシと一緒に合コン行ったの、覚えてる?」

「え?」


突然そんなことを言われて固まってしまった私に、お姉ちゃんはふんわりと笑った。

「な、なんとなく………?」


変なお店に連れて行かれたような気がする。
…ってゆうか、私が着いて行ったんだっけ。

部活帰りにお化粧したおねえちゃんと出くわして、いきなり『合コン行く?』なんて聞かれて。もちろん私は中学生だったし、興味津々に着いていってしまったわけだけど。


そんなうっすらと存在する記憶を思い出しながら、首を数センチかしげた。


「んー。まあ陽ちゃん途中酔っちゃったからね。覚えてないのもしょうがないよ。…んでさ、男の人たちの顔、覚えてる…?」

「…ん、えと。…お姉ちゃんの友達とかなんとかで。多分皆顔はすごい格好良かった気がする。…あと酔ったって…私お酒飲んだの!?」

「お酒は陽が間違えただけー。…ふぅん、じゃあ一人一人の顔は思い出せないのね」

「うん」


間違えてお酒飲んじゃうなんて…バカすぎるよ私。
心の中で頭を抱えつつ、少しほっとしたような顔をするおねえちゃんを上目で眺めた。

そして丁度目の前にさっき注文したコーヒーとカフェオレが置かれて、喉が渇いているらしいお姉ちゃんは上品に不透明なガラスのコップに口付ける。

つられて私もカフェオレを口にするけど、やっぱりお姉ちゃん見たいにはいかなくて。
諦めながらすすって、口を離した。



「…お姉ちゃんは私にその〝男の友達〟を会わせたくないの?」



唐突に自分の口から発せられた言葉に、はっとする。
変なこと聞いちゃったかも。

チラりと前へ向き直ると、コーヒーを飲みながら目を真ん丸く開くお姉ちゃんが居た。