昔は可愛かった。そう、昔は。


今は張りつけた笑顔が普通の顔になってしまった、最悪な奴。


性格も変わってしまった。


あんなに、亜美亜美と後ろから付いてきた武はもういない。


いるのはあたしを支配しようとする男、金井武だけ。


あたしの知っている金井武ではない。


「久しぶりに話でもどう?」


嘘臭い。


「……そうね」


「ベランダでも行く?」


「えぇ」


歩き始めたあたしに付いてこようとした佐伯さんをあたしは止めた。


「しかし……」


「ごめんね」


知ってる。


あたしは、佐伯さんが、どうやったら断れないかを知っている。


そしてそれを使うのはいつもあたしの自己満足。






「……亜美、さっき、斎藤のとこの次男と話してたね。どんな関係?」


ほらきた。


分かってたよ。それが聞きたいって。


笑顔のままの武が怖いと思ったけど、あたしは怯えるような素振りは見せられない。なめられるだけだ。


「別に。今日紹介されたからちょっと話しただけ。後、手帳を拾ってもらっただけ」


「ふぅーん」


嫌味な奴。