佐伯さんが部屋に戻ろうとあたしを誘ったわけもこれで分かった。


こいつのせいだ。


“金井武”(かないたける)



あたしの三人いる幼なじみの一人。


武には病弱な弟がいて、昔は、あたしと、残りの幼なじみ2人の4人でよくお見舞いに行ったものだった。


一応みんないい家のご子息、ご令嬢だったわけで……


4人の中で一番に社交界デビューしたのは武だった。


小さな頃は武と呼ぶとき、“たけりゅ”となってしまって、はずかしくて、あたしは武のことを名字から“かな”と呼ぶようになっていた。






そして、“かな”はあたしの幼なじみであり、あたしの“婚約者”でもある。