大翔と別れた後、乱れた心を落ち着けるために佐伯さんこ部屋に戻った。


「亜美さん、私は久しぶりに亜美さんの本気を見た気がいたします」


「どういうこと?」


佐伯さんの言葉はあたしには難しかった。


「あそこで、驚きを隠されたのには驚きました」


あそこ……


意味が分かっていないのを察したのか、佐伯さんは詳しく言ってくれた。


「大翔様にお会いした時です」


「あぁ」


あの時はビビった。ってか、もうダメかと思った。


「亜美様はできるお方です。まだ挨拶まわりが終わっていません。参りましょう」


せわしない休憩だったな。


「まぁ、行きますか」


さっき入ってきたばかりのドアを佐伯さんがあたしより先に開けた。


あたしはそのドアの敷居から一歩でも出たなら、そこからあたしは、深瀬亜美として、完璧に演技する。



誰よりも美しく振る舞わなければならない。そしてそれがぎこちなくならないようにしなければならない。


でも、今のあたしならできる。