朝霧紫紀は振りほどくでも握り返してくるでもなく、そのまま私が手を引く方へと付いてきた。


柄にもなく私は久々に走った。
雪がもっと近く見れる場所まで。

朝霧紫紀が…雪に触れることが出来る場所に。























「ここなら…華央に会える。
雪は一晩中止みそうにない。
このままずっと雪に触れていれば…華央に巡り逢えるに違いない。」

「…お前がこんな夢見がちなことを言うとは思わなかった。」

「…夢見がちなどではない。
お前と華央は再び逢う運命にある。」

「この中から華央に会うのはなかなか時間のかかることだぞ。」

「時間なら止められるし、戻せるだろう。お前ならば。」

「そうだが…今は止めたいとも戻したいとも思わないんだ。」


しんしんと雪が降り積もるだけの静かな空間に、朝霧紫紀の低い声は異常なほどよく響いた。