「…なんで…」
「ぇ」
「なんで、その子なのっ?!」
「…」
「その子よりも、あたしの方が直紀の事知ってる!! あたしの方が、直紀を好きでいるのに!! 好きな食べ物も、嫌いな食べ物も!! 絶対、あたしの方が直紀の事知ってるんだよ!!
なのに…っ…どうして…っ?」
伊藤の目から、再び涙が溢れ出す。
俺はただ、それを見てることしかできない。
「…理屈じゃ、ないんだ…」
「…」
「気づいたら、あいつに惚れてた。”好きなところ”なんて、全部だし、あいつの嫌いなところなんてない。全部が…愛しく思える。いくら”どこに惚れた?”って聞かれても、即答なんかできない。それは、答えが見つからないんじゃなくて、理屈じゃないからなんだよ…」
「…」
理屈じゃ、答えられないんだ。