気持ちの良い風が


屋上を吹き抜ける。


その風に包まれながら、


あたしと十夜は屋上に佇んでいる。


ふと気が付けば、


十夜はあたしの膝の上にいた。


この男がもしあたしのものならば、


あたしはこの髪にも頬にも


触れることは許されるのに。


こんなにも触れてみたいのに、


あたしは絶対に触れてはいけない。


もの、と例えるのは


間違ってるかもしれないけれど。



あえて言うならば、


十夜はあたしのものではなく


里菜ちゃんのものなのだ。














「…ね、十夜」











寝ているこの男に


話しかけるのは、少し


おかしいかもしれないけど。









「あたしね…」










こうでもしないと、


気持ちが伝えられない。


口にしても伝わらないけど、


吐かないと溢れ出てしまいそうだから。











「好きなんだよ。ずっと前から…」











知らなかったでしょ?











そしてあたしは、


さっき止まったはずの涙が


また零れてしまった。


弱いな、あたし。


そう実感しながら、


溢れる涙を自分の手で拭った。
















「…んっ、ん~」













少しして授業が終わるチャイムが鳴り、


それに気付いた十夜は寝返りを打つ。


今の状態は、簡単に言えば


向かい合ってると言えようか。