それから時間が経って、


いつの間にか3年生が卒業した。


別に祝う先輩もいないし、


むしろ出てってほしかった奴らが


出てってくれたから。


ラッキーってしか思えなくて。


だけど、3年生が卒業しても、


俺らは学校があって。






「今日の数学、超だるかった」





「ちょっと難しかったな」





久々バイトがない俺は、


輝と力哉と3人で飯行こう


ってなって。


どこにするか決めながら、


街をぶらぶら歩いていた。


3月っていっても、


まだまだ寒くて。


日が沈むのも早い。


まだ6時前なのに、


辺りはもう真っ暗で。






「結局どこにすんだよ」





「ファミレスも飽きたしな」





「ラーメンは?」





なんて、話してる時。


俺の携帯が光り始めて。


そこに出た名前が、


咲坂で。






「え、里菜ちゃん?」





「ちょ、会話聞かせろや」





結局出させられて、


言われるがままにスピーカーに


したまま、電話に出る。






「もしもし」





『十夜?久しぶりだね』





「うん。何?用事?」





辺りが静かな場所に移動して、


俺ら3人、咲坂の声に


意識を集中させる。






『高原さん、さ』





いきなり朱里の名前が出て、


一瞬で体を強張らせる。


何で今更、


朱里なんだよ。






「は?」





『可愛いよね』




「何言ってんだよ、なあ!」




『本当に十夜って高原さんのことになると、すぐ熱くなるよね』






電話の向こうで、


くすくす笑う咲坂にイラつく。


隣で聞いてる2人も、


真剣に話を聞いていて。






『でも熱くなってる場合じゃないから』





「だから、何っ…」




『高原さん、どうなっちゃうんだろ』





きっと咲坂が目の前にいたら、


ぶっ飛ばしてるかもしれない。


それほど、俺は、


この状況に危機感を覚えている。