『面倒だね、うん』





「去年、お前俺に年賀状手渡して来たの、覚えてる?」






去年は家に朱里からの


年賀状は届かなくて。


でも、届くはずないかって。


だってあいつ俺の住所


知らねえしって。


そう言い聞かせて、新学期


学校行ったら。






『あ、そんなこともあったね』




俺の席に、手書きの年賀状


持ってきてくれて。






「まじであれは恥ずかしかったから。今年はするなよ」





『やれってフリでしょ?』





「ばか、違ぇよ」





だから今年は。


みんなにやってる、


年賀状を渡し合うんじゃなくて。






「今年は、あけおめ電話でいいんじゃね?」





電話をしよう。


普通はやらないような。


あけおめって言い合う、


電話をしよう。





『あけおめ電話って。初めて聞いたよ』




「初めて言ったし」




朱里としかやったことねえし。


他の誰とも、


やる気なんかねえし。






『いいよ、あけおめ電話。初めてだけど、する?』





「しょうがねえ、してやるよ。楽しみにしとけ」





楽しみなのは俺の方で。


もう嬉しくてほら、


口が閉まらない。







『うん…楽しみにしてる』






何で、こいつは。


こんなに可愛いんだろう。


愛しいって、


こいつのために


あるんじゃないかって。






「誕生日おめでとう、朱里」





精一杯の気持ちを込めて。





「ありがとう」





生まれて来てくれて。


出逢ってくれて。


ありがとうも込めて。