クリスマスは、


イヴも当日もバイトで埋めた。


朝から夜までバイトした。


過ごす相手がいないことと、


朱里がいない寂しさを埋めるために。


休憩になって携帯を触れば、


朱里からの連絡がない代わりに、


咲坂からのメールと着信で


埋まっていた。


返すことも、かけ返すこともなく、


確認だけして電源を切った。


虚しくて、寂しくて。


柄にもなく、休憩室の窓を開けて、


外を見る。


すると、いつの間にか雪が


降っていて。






「藤田くん、お客さんだよ」





「客?」






あと5分で休憩が終わる。


そんな時に、店長にそう言われ。


こんな時間に誰だと思いながらも、


店の外に出てみる。


もしかしたらな、って。


些細な希望を持ちながら。







「十夜!」






希望なんて、


持つんじゃなかった。


そうだろうなと思ってはいた。


だけど、違ったらなって。


違ったらなって。






「何か用?」






「あのね、クリスマスだから一緒にどこか行かないかなって」






ファーの付いたコートを着て、


派手な色のミニスカートを履いて。


ヒールの音をコツコツ言わせて、


俺に駆け寄ってくる。


その姿が、俺にはおぞましい。






「バイト中だし、この後輝たちと約束あっから」





「じゃあ、一緒に混ざりたい!あたし1人がだめなら、女の子誘うし。ね?」






今考えれば、


朱里が来るはずない。


ここの場所知らないはずだし、


第一、彼氏と過ごすんだろうし。






「ね、十夜。今日何時まで?あたし待って…」





「まじで、いい加減にしてくれ」






咲坂は、俺の腕を掴んで


離そうとしない。


俺はもう、


どうすることも出来なくて。