あたしは帰ろうとする十夜を


無理矢理座らせた。


傷口洗って、と嫌がる十夜を


強引に水道のある場所に連れて行き、


痛がるのを無視して傷口を


ごしごしと洗うあたし。



薬品がたくさん入っている戸棚から、


綿と消毒液を取り出し


目の前に広げる。









「染みるけど…我慢してね?」






「…ん、っつ…痛ぇ」









相当痛いのか、


目をぎゅっと瞑っている十夜。


あたしは早く助けてあげないと、と


自分の手を早めた。









「はい、おしまい」








傷口に絆創膏を貼り、


最後に軽くそこを叩いてやった。







「いってぇ、お前…」






本気で痛がる十夜を見て、


あたしは少し笑う。









「あ、そうだ。こないだジュースありがとうね」









床を見ながら十夜に礼を言った。


ジュースをもらってから、


お礼を言う機会があまりなかったし。


言っちゃえ、的な。


そんなタイミングで。











「別に。忘れてた」








素っ気無く言い放たれたのに、


あたしは嬉しくて頬を緩ませている。









「十夜…さ、」








沈黙が走った。


あたしの次の言葉を


待っているかのような、


そんな感じ。










「里菜ちゃんと、上手くいって…る?」










こんなこと、


言うはずじゃなかったのに。


せっかく2人なんだから、


もっと楽しい話すればいいのに。




















「いってるよ」