「場所、変えるぞ」




十夜はあたしに手を差し出し、


あたしはそれを取ると、


ずっと手を繋いで歩いた。


こんなに、十夜と一緒に


いたことがないから。


すごく緊張する反面、


嬉しい気持ちでいっぱいで。


会いたかった。


一緒にいたかった。


こんな些細なことでも、


幸せを感じるんだから。


あたしって、幸せ者だな。






「朱里、腹減ってねーか?」





「うん。今日ね、麗華と恵衣とご飯食べたから大丈夫」





「のどは乾いてねーか?」





「うーん、そうだなぁ」





少し考えると。


コンビニが見えて来て。





「買ってくるから」





そう言って、手を離しそうになった。


だけどあたしは、


必死に掴んで。





「行かないで」





離さなかった。


嫌だった。


1人にされるのも、


手を離されるのも。





「悪ぃ。自販機にするか」





「うん」





少しでも一緒にいたくて。


少しでも傍にいてほしくて。


あたし、すっごいわがままだな。


里菜ちゃんがいるっていうのに。


自分のものみたいに扱って。






「麗華、どこに来てくれるの?」





「学校。今、先輩と一緒にいるけど、車だから安心しろってさ」





先輩って、健先輩かな?


そういえば、健先輩免許取ったって


言ってたっけ。


車なら安心だな。






「俺が家まで送ってくから、心配すんな」






な?と、静かに言う。


あー、もう。


十夜といたいな。


ずっと一緒に、


十夜ならいれるのにな。


諒司先輩じゃなくて、


十夜なら、いれるのに。







「朱里!」





学校の玄関に座っていると、


校門の向こうに車が止まって、


中から麗華が走って来た。


顔には慌てが出ていて、


すごく心配してくれている。